以下私が体験してきたことを文章化しました。よって全てのひとに当てはまらないかも知れませんので、その辺りを割り引いてお読みください。
和文電信で交信することをゴールとする場合は以下のような段階を経る必要があります。
【1】符号自体を覚える
【2】実際の交信を聞いて筆記受信練習
【3】送信練習
【4】実際の交信をする
【1】符号自体を覚える
まずは符号自体と覚えなければ始まりません。
点と棒を目で見て覚える方法はあまりお薦めしません。これは受信時に点と棒が頭の中に浮かび、その後文字に変換するというプロセスが邪魔になり、スピードを上げると途端に破綻してしまうからです。これは所謂合調法(いとーろじょーほこー的なやつ)にも当てはまるので全くお薦めしません。
もちろん点と棒で覚えても、先ほどの理由で結局は音で覚える方に自然に向かいます。よって点棒方式はどうせ無駄なので初めからやらない方が良いとの考えです。
実際欧文でも和文でも実際モールスを使いこなしているかたは点と棒で書かれたモールスコードを見ても、そのままでは文字が浮かんで来ません。いちど「ぴぴーぴ」みたいに口ずさまないと文字にならないひとが大部分です。
モールスによる通信は音響受信です。「ぴぴー」と言う音を聞いて即「A」なり「イ」なりの文字を頭に浮かべ、場合によってはその文字を筆記します。ですから「音=文字」になる練習から始めるのが合理的です。これを音感法と呼んでいます。
音感法の習得は、昔はカセットテープやCDでモールスを聞いて筆記するのがポピュラーでしたが、今は便利な世の中になり、LCWOというサイトがあります。
LCWOで和文のお稽古動画です。by JA1BJT
モールスを覚えるとは、ごく単純にいうと欧文は26文字の、和文は48文字(くらい?)の区別を付ける事に他なりません。(実際はこれに数字や記号を加えることになりますが)
これを細切れに第1段階は「イ」と「ロ」の2つを区別できるように練習、第2段階は「イ」と「ロ」と「ハ」の3つを区別できるように練習、、、これで第47段階まで修了したときに全48文字の区別が付くようになり、取りあえず符号を耳で覚えたことになります。
この区別をつける訓練は20WPMくらいの実際に和文交信している局と同じくらいの速度で行います。 いきなりそんな速いスピードでこられても分かるわけがない!と心配されるかもしれませんが、あまり遅い速度でやっても、あとから速度を上げる方が余程大変なのです。
ですから、欺されたと思って(笑)20WPMで取り組んでみましょう。
1日10分程LCWOによるお稽古に取り組めば1週間もすれば符号自体は覚えられると思います。コツは少しずつで良いので毎日練習することです。1日2日開けると忘れてしまうので。(笑)
練習開始から1週間も経つと苦手な文字が何なのかだいぶ分かってくると思いますが、時間が掛かってもよいのでとにかく和文なら48文字、欧文なら26文字の区別が付くようになれば「【1】符号自体を覚える]の段階は修了です。
【2】実際の交信を聞いて筆記受信練習
次はいよいよ実際の交信を聞いて書き取る訓練です。
アマチュアバンドはどこでもよいのですが、国内同士の和文交信が盛んなのはやはり7MHzでしょう。是非とも7MHzが受信できるトランシーバを用意してください。
都市部などでは2m和文が盛んなところもあると思います。受信練習対象に事欠かない場合は2mも選択肢ですが、全国的にはやはり短波帯、それも特に7MHzが練習に最適だと思います。
HF帯はアパマンなどでアンテナがあげにくい環境のかたもいらっしゃるでしょうけど、なんとかその環境を作って挑戦していただきたいと思います。
最近のHFリグは標準でCW信号を快適に受信できる狭帯域のフィルタ機能が付いています。古めのトランシーバはCWフィルタがオプションになっているのが普通です。古いビンテージ無線機を整備して楽しむ趣味も存在しますが、ここはIC-7300とかIC-705みたいな最近のトランシーバを用意しましょう。(※アイコムにこだわる必要はありませんが、値段がこなれていて使用しているかたが多いのが先ほどの2機種なので書いたまでです。)
和文の交信は7.020~7.030MHzの10kHzでよく聞かれます。VFOをくるくる回して受信してみましょう。 なるべく符号が綺麗で信号強度が充分な局に狙いを定めて早速紙に受信した文字を書き取ってみます。
いきなり全部が受信できるわけではありませんので、取れなくても心配しないでください。 この際大事なお約束があります。
それは「聞き取れなかった文字を思い出そうとしないこと」です。
思い出そうと頑張ると、次々にモールス信号がやってきて、10文字くらい取れずに終わってしまうのです。
それだったら受信できない文字が現れたら初めから潔く諦めて紙に「・」(中ぽち・黒点)を書いて次の符号に集中します。
潔く諦めて次に備えるのもなかなか難しいのですが、10文字も飛ばしてしまうより、1文字2文字落とす方がかなりマシです。 何故なら後から受信した電文を解読することがしやすくなるのです。
和文の場合は話し言葉の普通文による日本語ですから(当たり前!w)、途中のひと文字ふた文字が「・」であっても内容は分かることが多いのです。(固有名詞とかはダメかもですが)
この「・」打ち受信を続けていると、受信ミス(取れなくて・を打つ)する文字の傾向が分かってきます。自分の場合は初めの頃は「ヒ」と「ユ」が取れなかったですが、稚拙ながらも和文交信を続けていくと半年くらいで苦手文字は克服できました。
【3】送信練習
ここまで来ると和文のラバースタンプ的な交信や、よく出てくる言い回しは取れる・・・と言うか予測が当たるようになります。 例えば「ヨロ」ときたら「ヨロシクオネガイイタシマス」ですし、「アリ」は「アリガトウゴザイマス」でしょう。
さて送信練習ですが、電鍵はダブルレバーのスクイズキーから始めましょう。もちろん既に欧文交信をされているかたは、使い慣れている縦振りやバグキーでも良いです。
全くの初心者のかたにはエレキー(スクイズ)をお薦めします。
理由は綺麗な符号を送出しやすいから。あと和文交信は30分~1時間と長時間に及ぶことが珍しくないため、楽に送信がし続けられるほうが良いからです。
スクイズ操作は初めは難しいかもしれませんが、頭に思い浮かんだ符号(や符号の塊)をみると手が勝手にスクイズ操作しちゃうくらい練習しておきたいところです。まあ程々で良いでしょう。 冷や汗かきながら実際に交信する方が何倍も効果がありますので。
【4】実際の交信をする
ここまで到達したら後は実際に交信して焦らず一歩一歩階段を上るようにお稽古を続けることになります。
交信相手は日曜早朝に実施しているA1CLUBのオンエアミーティングや和文寺子屋がお薦めです。
よく「交信中に取れなくなってお話の内容が分からなくなったらどうしよう」と思い、なかなか第一歩が踏み出せないひともいらっしゃいます。でもそれは杞憂に過ぎません。
アマチュアの交信ではそれほど複雑なことを和文で送受信していることもありませんし、仮に受信に失敗しても誰にも迷惑は掛かりません。
初めのうちは、相手が何を打ってきても気にせず予め作っておいたアンチョコ通りに打ち切って73を送って交信を切り上げちゃっても問題ありません。(世に言う「打ち逃げご免!」)
交信相手も「あー、きっとこっちが打ったことと取れてないんだな。」とベテランならすぐに分かります。 そんなベテランも和文始めたときは似たようなものだったことでしょう。 ですから受信できなくても気にする必要は全くありません。
それでも、実際の交信を始めて半年~1年ほどすれば、よく出てくる名詞や言い回しはいちいち脳内変換するのではなく符号音の塊として理解するようになってくる筈です。
オテンキとかキオンとかコール・シンゴウ・リグ・アンテナ・コンデイシヨン・オゲンキデ・デハ・ソロソロ・シツレイシマス・オハヨウゴザイマス・コンニチハ・コンバンハ・アリガトウゴザイマス・ヨロシクオネガイイイタシマス・ハレ・アメ・アツイ・サムイ・コチラ・デス・マス・タイヘン・・・・のようによく出てくる言い回しや単語は全部聞いて文字変換はしなくても頭にその文字がパッと浮かぶようになってきます。
よく交信をしていると、いつもの時間帯のいつものメンバーみたいなおなじみさんができてくる筈です。こういう練習仲間みたいなのができるとコミュニケーションの幅も広がり楽しみながらスキルアップになってきます。
同好の仲間との世間話こそ和文の一番面白いところだと思います。できるだけ沢山のかたが和文を楽しんでいただけるようになれば幸甚です。そんな想いでこのドキュメントを書いてみました。
DE JF0RRH 高村和則 長野市